置き換え能力と学び、継続と変化の本質

今回のウェビナーでは、米九十株式会社の浅倉社長をゲストに迎え、「無知こそ最強の武器」というテーマでお話いただきました。20代という若さで起業した浅倉社長。当初は「請求書も領収書も送れなかった」「メールの送り方もわからなかった」そうで、まさにその「できなさ」が悔しさとなり、挑戦するエネルギーに変わっていったといいます。失敗や指摘を受けるたびに「変われるチャンスだ」と思うようになり、やがてそれがポジティブな行動の源になりました。

「学ばなければならない」からこそ動く

浅倉社長の「学びに意味や価値を求める前に、まず学ばなければならない」という姿勢。「無知である以上、学ぶ選択肢しかない」とし、未経験の新規事業に取り組む際も、損得より「やると決めたらやるしかない」精神で臨んでいたそうです。

これは鉄骨事業を立ち上げたときにも表れています。知識も営業先もゼロからのスタートでしたが、「仲間を信じてやるしかなかった」と話します。

 浅倉社長流「学び方」 ― メモを取るなら“そのまま”じゃない

勉強会などでも、浅倉社長はただ話をそのまま書き写すことはしません。話を聞きながら「自分ならどうするか」「今の自社に置き換えると?」という視点でメモを取っていきます。これは単なる情報収集ではなく、「実行前提の学び方」であり、“インプット”と“行動”が密接につながっていることの表れでもあると思います。

浅倉社長は、学んでも動かない人が世の中には圧倒的に多いと指摘していました。その違いこそが、行動を起こす側と、変化しないまま時間が過ぎてしまう側の分かれ目となります。

また、「自分ごとにすれば、どんなことでも学びになる」と語る浅倉社長。逆に言えば、どんなに良い話を聞いても、自分の中で意味づけしなければ学びにはなりません。自分に置き換え、「自分だったらこうする」と考えることで、あらゆる場面から学びを得られるのです。すべての出来事を、自分の成長に繋げる意志が大切であると強調されていました。

質問する人は「自分の言葉を持っている」

対話の中で印象的だったのは、質疑応答の捉え方についてでした。浅倉社長は「質疑応答での質問内容で、その人がどれだけ自分の言葉で咀嚼しているかがわかる」と語りました。質問しない人が多い中、質問してくる人の内容から、その人が短時間でどこまで自分の立場で思考を巡らせたかが伝わってくるというのです。

ここから見えてくるのは、「自分の言葉で語る力」がいかに大切かということ。表面的な理解ではなく、咀嚼し、内面化して言葉にするというプロセスは、その人の成長に直結します。

子どもからの学びと「立ち止まる力」

印象的なエピソードとして紹介されたのが、「3歳の子どもと真夏の道を歩いていた時」の話です。38度の猛暑の中、子どもが突然立ち止まり、「すごくきれいな花が咲いてるよ」と言ったというエピソード。この一言に、自分が自然や美しさに無関心になっていたことに気づかされたと語ります。

「子どもは想像力のかたまり。私たちが見落としがちなことを教えてくれる存在だ」と語る浅倉社長。この体験を通じて、「一度立ち止まり、足元を見ることの大切さ」に気づいたといいます。忙しい時こそ、視点を変える余裕が大切だという教訓が込められていました。

変化と継続の秘訣

「変化は決して悪いことではない」と断言する浅倉社長。社名変更やミッション・ビジョンの見直しも含め、米九十は常に変化し続けてきました。大切なのは「本質を見失わないこと」。

一方、継続の秘訣について聞くと、「結果的に続いてきたにすぎない」と謙虚に語られていました。継続を目指していたわけではなく、気づけば続いていた。その理由は「信じ合える仲間との出会い」にあるといいます。

「一緒に笑い、ぶつかり合い、悩み、挑戦してきた仲間たち。そうした人々と一緒だったからこそ、ストレスを最小限に抑えながら続けてこられた」と述べています。仲間とは、単に利害関係でつながる存在ではなく、価値観を共有できる人たちであり、「共に信じ、共に進む」ことができる関係こそが、持続性を生む鍵だということです。

置き換え能力が未来をつくる

今回のウェビナーを通じて見えてきたのは、「自分に置き換える視点」こそが、学びを深め、行動を変え、人とつながり、継続と変化を支える原動力になるということです。置き換え能力とは、単なる技術ではなく、「生き方」そのものと言えるのかもしれません。

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