半田そうめん 半田手延麺 八千代って?

半田手延麺 八千代は徳島県阿波市に本社を置く、半田そうめんのブランドです。
工場は徳島県美馬郡つるぎ町半田にあります。

半田そうめんは300年以上歴史のある徳島県の名産品です。

実際はそうめんの規定幅を超えているのでそうめんとは呼べないのですが、江戸時代から続く伝統と麺文化の地域性が認められ、特別に「そうめん」と表記されています。

半田そうめんの特徴は煮込んでも麺がのびない、うどんのような強いコシと、そうめんのツルツル食感。その両方を併せ持つ独特な食感のハイブリッド麺です。

「半田手延麺 八千代」の製造販売を行う株式会社そらにわ代表の森和也さんは、徳島県出身で、もともと福祉業界で仕事をされていました。

社会福祉士や介護支援専門員の資格をお持ちで、高齢者福祉から障がい者福祉の現場に携わってこられた後、福祉コンサルの仕事もされていました。

淡路島では障がい者の方々と一緒にA型事業所として宿泊施設を運営し、旅行サイトで淡路島宿泊施設口コミ1位になるほどの人気宿でした。

しかし、土地の所有者の方が亡くなられたことをきっかけに、宿をたたむことに。
そのタイミングで家庭の事情もあり、約11年ぶりに徳島県へUターンしました。

ただ、障がい者就労の現状を変えたいという想いを持ち続け、地元徳島県で何ができるか模索しているなか、八千代の事業継承の話があり、一念発起して事業承継をすることになりました。

事業継承で社長に就任

もともと半田そうめんの数あるブランドの中の一つに「半田手延麺 八千代」がありました。
国産小麦100%使用のこだわりで、多くのファンに愛されてきました。

しかし、2020年5月に一度惜しまれつつ廃業を余儀なくされる状況に。

大きな原因は新型コロナウイルス。今まであった百貨店催事が一気になくなり、手売りの場が失われたことにより、現金収入を得ることができないことが原因でした。

なぜ倒産してしまった八千代と現在社長である森さんとが繋がることになったのか。

それは偶然のことでした。

倒産当時の社長さんと仲の良かった味噌会社の社長さんが、在庫整理や片付けを手伝っていたときに地元の方々から「なくさないでほしい」「本当に残念」などの切実な声を聞いたそうです。
そこで何とか復活できる方法はないかと、何人かの友人に声を掛けていたところ、森さんのところに事業継承の話が舞い込んできました。

森さんはこの話を聞いた時、率直に「もったいない」と感じたそうです。

そう感じた理由は3つ。

①国産小麦100%使用というこだわりを持つ製品の良さがまだまだ伝わっていないのではないか?
②以前からECサイトでの販売はされていたが、販売方法の工夫などまだまだできることはあるのではないか?
③製造施設、機械なども使える状態であった上に、以前働いていたスタッフも、また復活するなら八千代で働きたい!と言ってくれた。

すべてのことについて、「まだまだやれることがあるんじゃないか? もうやることはない! と思えるまでやる!」という信念をお持ちの森さんは、八千代復活の可能性を見出して事業継承をされ、2020年11月から新しい「半田手延麺 八千代」がスタートしました。

他社との違いは国産原材料「身土不二」の考え方

八千代のこだわりはなんといっても原材料が国産100%であること。

半田そうめんの材料は至ってシンプル。
小麦粉・塩・油の3つです。

森さんが社長になる前から八千代は国産小麦粉を使用していましたが、油も含め、すべて国産に変更したのは森さんになってから。
そう変更したのは森さんの中の「身土不二」の考え方が理由だといいます。

人の体にとって一番いいのは、生まれ育った土地の物を食べる生活が良いという考え方です。

徳島に戻る前に住んでいらっしゃった淡路島で、「和ハーブ協会」の活動をされている知り合いの方がいて、その方と関わるなかで、暮らしも食材も足元に目を向ける大事さを再確認されたそうです。

以前森さんが米粉の商品を購入した際、100%米粉で作られていると思っていたら、数パーセントしか米粉が使用されておらず、騙されたような気分になった経験があったといいます。
自分が作る側に回った時、お客さんにはこんな思いはしてもらいたくないという思いから、八千代の材料には常にこだわっているのだそうです。

福祉という異業種からの参入が強みに。

まったく違うキャリア、異業種の業界から参入されている森さん。

そのことを森さんにお聞きすると、実は一見関係ないようで、八千代を継承する時、今までの自分のキャリアと繋げられると感じたとお話いただきました。

福祉で障がいのある方の就労支援に関わってきた経験から、八千代でもいずれは障がいのある方が活躍できる場を作っていけるのでは、と思ったといいます。

そこにまた「身土不二」の考え方が生きてきたのだそうです。

これからどんどん人口が減り、働く人が減っていく中で、障がいがある方や高齢者の方、都会に疲れて帰ってきたような若者など、働きたいと思ってもなかなか思っているように働けない人たちが身近な地域のなかにたくさんいる。

自分の足元に目を向けて一つ一つ課題に取り組むことが、自分なりの足元を見ることだとお話いただきました。

これからの取り組み ‐半田そうめんの良さを広めるために‐

実際に半田そうめんを食べられた方から、半田そうめんの良さは食べてこそ実感できるとよく言われます。

夏向きのツルツル食べられる食感と、冬向きの煮込んでも麺が崩れないコシの強さなど、まず手にとって食べてもらうことで良さに気づいてもらえると森さんは考えています。

そのためには、ただ商品を作って待っているだけではダメだと考え、自分たちが発信してさまざまな形で多くの人に知ってもらえるよう工夫を重ねています。

例えば、海外の商談会に参加したり、大手居酒屋チェーンの突き出しメニューとして八千代の商品を使用してもらったりと、どうすれば多くの人に八千代を知ってもらえるかを常に考えていらっしゃいます。

また、JTBと協力して工房体験ツアーも計画されています。

実際に工房見学させていただいた時の小麦の香りは、現場に行かないと体感できない五感を使った体験でした。

常にチャレンジを続けること

若者へのメッセージをお聞きすると、「何にでも挑戦してほしいですね」、とお話いただきました。

森さん自身、仕事をしながらも1年に1つは資格を取るなど、自分に対しても常に挑戦をされています。
八千代の事業継承の時の話でも「もうやることはない!と思えるまでは、諦めずにやり続ける」と考えているように、やってみないとわからないことがほとんどなんだから、常にチャレンジしてほしいとお話ししていただきました。

終始優しい穏やかな森さんの表情の中には、「やり続ける」という強い信念が常にあることを、現場でお話を伺って感じることができました。

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