WEEK神山とは
WEEK神山は徳島県神山町の宿泊施設です。
築60年の古民家をリノベーションした母屋(フロント兼食堂)と神山の檜と杉をふんだんに使った宿泊棟で成り立っています。
WEEK神山は、神山町を代表するサテライトオフィス・えんがわオフィス(株式会社えんがわ)の代表である隅田徹さんが2015年の7月にオープンしました。
神山には、神山温泉以外に大人数を受け入れられる宿泊施設がありませんでしたが、WEEK神山ができたことで、これまで以上に多くの訪問者を迎え入れることが可能になりました。
現在代表を務めているのは神先 岳史(かんざき たけし)さん。神先さんは京都府出身で株式会社リレイションが行う神山塾に参加するため、12年前に神山へ。
屋台活動や、日替わり店長のシェア店舗での「カフェイレブン」の営業などを経て、WEEK神山を運営する株式会社神山神領の代表取締役に就任しました。
WEEKという場所
徳島県神山町は消滅可能性都市と言われながらITベンチャーが次々と進出。寛容性と創造の町と呼ばれ、地方創生のメッカ、IT企業のサテライトオフィスが多い町としても知られています。
WEEK神山は元々、そんなテレワークなどに訪れた方々のための、体験宿泊施設としてオープンしました。
以前は外から町を見にくる個人や企業などの視察や研修が中心でしたが、最近は一般的な観光で来られる方々も増えてきました。
特に宿泊した方の紹介や、リピートで来られる方々が年々増えてきていて、人の関係性の中で安心して過ごしていただける場所としてWEEKは変化してきました。
『新しいいつもに出逢う』
【代表の神先さん。】
WEEK神山のHPを開いてまず目に入る言葉、「新しいいつもに出逢う」。
その意味を代表取締役の神先さんにお聞きすると、神山の日常の暮らしを凝縮した時間を過ごしてほしいという想いだそうです。
神山に訪れてもらって神山の日常の時間を感じてもらうことも大事だけど、来られた方々の「いつもの日常」の時間も素敵なはず。
神山では、人との出会いや偶然の中での新しい動き、「ちょっと先の未来」を感じてもらいたいという想いがこもっています。だから「非日常」とは違う。非日常はワクワクや刺激であったりするけど、WEEKでの時間はもっと穏やかな時間を過ごしてほしい、そんなイメージだそう。
終わらせる方法も常に考えている
古民家を改修した宿を守り続けるために、自然に囲まれたロケーションを最大限に生かせるよう、景観の整備にも毎年少しづつ取り組んでいます。
崩れた石積みの修復や、鮎喰川へ降りていく道の整備、河原の清掃など、専門家の方にきていただいてイベント形式で取り組んだり、日々の業務で手を入れたり、WEEKという宿を中心に景観を作っていけたらと思っています。
続ける方法を考えつつも、終わらせ方も常に考えているという神先さん。
自分の人生の中でずっとどこかに居続ける感覚はなくて、WEEKという場所は、土地の所有者の方も居られるし、株主である地域の方々も居られる。いつかは自分じゃない人が運営するかもしれないし、そもそも建物自体が古いので朽ちてしまうかもしれない。だから、常に常に終わりは考えていると言います。いつも新しい挑戦をされている印象の神先さんの言葉の中では意外でした。
WEEKのインターンは僕なりの「神山塾」なんだと思う
WEEKのインターン制度は独特です。
募集期間も特に指定せず、お互いタイミングが合えばという曖昧な設定。
原則宿の空いている部屋か宿直室で滞在、食事もある程度は用意されます。
報酬は基本的にないですが、働いてくれた時間によって相談は可能で、相手との関係性の中で話して決めています。
インターンは学生だけではなく宿の取り組みや神山に興味がある方などを対象に、神山という場所に興味がある方や、宿の取り組みに興味を持ってもらえる方に来てほしいと思っています。
インターン募集の目的は、人手があることで宿の余白が生まれ、多様な人の出入りがあることで、人間の体のように、常にWEEKの新陳代謝を高めていくこと。
深刻な人手不足ということはありません。
WEEKの業務内容は掃除など家事のようなことが多いので、どうしても同じことの繰り返しになり、変化が生まれづらいといいます。
でも、そこにインターンスタッフが来れば、仕事をイチから教えることになります。教えるためには、作業をあらためて確認したり、自分たちも基本に忠実に仕事をしていくことが必要です。そうやって、常に学ぶ状態や外部の人の目を意識する状態に身を置くことで、仕事をただのルーティンにしないことを大切にしているそうです。
「WEEKのインターンも神山塾と同じで、ここに来れば変われると思って来ても、それだけでは変われないと思うんです。与えられた環境で自分ができることを見つけて、やってみるとか、やっぱり実際やっていくこと、続けていくことでしか、変われないと思うんです。何がやりたいのかも詳しく聞くようにしています。だからWEEKのインターンは僕なりの神山塾をやってる感じです」と神先さん。
料理や食での場づくりが、仕事になってきた
WEEKは宿の役割の他に、神山でいろいろなイベントを行う場所としての機能も果たしています。
研修の場、報告会などの場で、生産者さんや作り手の想いが感じられる神山の食材を使ったご飯を食べながら、いろんな人たちが集まる場を神先さん自身が作っていることも、神山塾に通じるものが感じられます。
「どんな場所を目指されているんですか?」とお聞きすると、「それぞれに居場所がある、ギスギスしていない場所かな?」と神先さん。私自身、WEEKでのイベントに参加させていただいて、どんな会でも、神先さんがもつ独特の柔らかい雰囲気が、その場を包み込むような場づくりをされているなと、いつも感じます。
実は、どんな料理が出ているかはそんなに重要なんじゃなくて、そこにどんな人たちが集まるか、どんな会話が生まれるかの方が大事なんじゃないのかな、そんなきっかけの場づくりを、これからもして行きたいとお話されていました。
これからしていきたいことは、神山を伝えること
今後していきたい活動はありますか?とお聞きしたら、「神山を学ぶ・神山を伝える活動をしたい」と答えてくださいました。
宿泊者の方にも神山のこと、今の神山になる流れはどんなことがきっかけだったの? といったことを聞かれることが多いそう。
「誰が見ても分かりやすい神山年表を作りたいと思っていて、実際デザイナーさんにお願いしてるんです」とのこと。
「現在の神山に行き着くまでには、地元の方々が地道に継続して来られた、アリス人形の里帰りや、神山アーティストインレジデンス、アドプトゴミ拾い活動などいろんな事があっての結果、神山まるごと高専や、サテライトオフィスなどができている、という流れを知ってもらいたい。そのために、神山のキーパーソンを月1回招いて報告会や勉強会のような会を開きたいと考えています」
とにかく「やっていく」を続ける
「神山も神山塾も、いろんな人を受け入れてきたと思うんです。
どう考えても面倒だな、関わりたくないな、と思うような人でも受け入れることによって新しいものが生まれてきた。
その流れをどう広げていくのかを、今は考えています。場づくりにおいても、自分がやる範囲は知れていて、その許容範囲を超えないようになってしまうけど、どうしたら成長できるか、と考えたら、常に「少し」背伸びをする、自分の器の縁ギリギリをやっていけば、結局成長できてる気がする。今後も、大きくは難しいから、とにかく「やっていく」ことを続けるしかないのかなと思います」とお話してくださった神先さん。
常に「できる範囲」を少しづつ確実にやった結果、WEEKが神先さんのような穏やかな雰囲気で宿泊者もスタッフも包みこむ、素敵な場として変化し続けるのだろうなと感じました。