株式会社ホームラボは福岡県久留米市にある注文住宅の工務店です。
社長の徳冨総一郎さんが1998年に創業しました。
家づくりのおもしろさとは?
創業社長の徳冨さんのキャリアは大学卒業後、ハウスメーカーに就職したことから始まっています。
この会社での仕事を通じて「家を作るのって面白い」と思うようになりましたが、お父さんが経営していた建設会社を手伝うため退職し、家づくりからは一度離れることになりました。
その後、建設会社では工務店やゼネコン向けの商品開発などに取り組んでいましたが、エンドユーザーに直接販売するわけではないため、一生懸命作っても実際に使う人にその良さを伝えるのが難しい、といった課題を感じることに。
前職で関わっていた家づくりへの思いも残っており、注文住宅専門の会社としてホームラボを設立しました。
家を作ることにこだわりを持つ理由をお伺いしてみると、
「注文住宅というのはお金を払って作る人と使う人が一緒なので、お客さんといろいろ話し合いながら作ったものが完成して喜んでもらえるのがうれしいです。それにほかの建築と違って、自分一人で担当することができるから、こだわりを持って仕事を進めることができる。それがわがままな自分の性格にぴったりで(笑)。
一生で一番大きな買い物でもあるから、お客さんと顔の見える関係性のなかで、そういう思い入れの強いものに関わることができるのが、家づくりの面白さだと思います」
ホームラボが目指しているもの
会社を作るにあたって目指したのは、「性能とコストを両立する」こと。
会社を作った当初はまずコストダウンに取り組んでいましたが、やはり安いだけではダメだと考え、高性能な家を久留米で広めることに取り組んでいくことに。
一般的に「高性能な家」というと、省エネや断熱などエネルギー効率が良いことや、耐震性や耐久性がが高いことなどが挙げられますが、ホームラボではこれらのどれかだけが優れているのではなく、高いレベルでバランスがとれていることを重視しているといいます。
「最初は”高性能な家”の良さを言葉で伝えるのは難しくて。例えば、地震に強い家の良さは実際に地震が来ないと実感できないし、暖かい家というのも体感してみなければピンとこないですよね。だから1回作って実物を見せなくちゃいけないっていうことで、お金はあまりなかったんだけど、モデルハウスを作りました。最初はみんな『ここまで良くなくてもいいです』と言って半年くらいは全然注文が入りませんでしたが、もうダメかなと思った頃に注文をいただけるようになって。この経験が自分のなかでは大きかったですね」
その後、自社で設計したパネルを使った工法を採用したり、完全にゼロから設計する住宅だけでなく、ある程度固定のデザインが決まっている「規格・準規格住宅〈FRAME〉」というシリーズを開発したりするなど、ホームラボなりの価格と性能のバランスが取れた家づくりを確立していくことが、会社としての大きな流れの第一フェーズだったといいます。
家を建てる人の家計と工務店の経営、両方がWin-Winになる仕組みづくり
次に取り組んだのは、「家を建てる人の家計と工務店の経営、両方がWin-Winになる仕組みづくり」。
お客さんは家を買うために30年以上のローンを組むのに、中古住宅に価値がなく、建てた家の評価額がおよそ20年で0円になってしまうのでは、家を建てることがその人にとって幸せなことなのかわからない。
一方、工務店にとっても、新築住宅を建てるだけでは常に新規顧客を探し続けなければならず、そうしたリピーターのいないビジネスモデルというのは持続可能ではありません。
これではどちらにとっても良くないという問題意識からいろいろ調べていたところ、外国では中古の住宅が高く売れたり、買った家を高く売って新しい家に住み替えていくという例があることを知りました。
いきなり外国と同じような状況にはならずとも、まず自分たち工務店ができることから始めようと考えた徳冨社長。
中古住宅を少しでも高く売るためには家が綺麗な状態を長く保つことが必要ということで、有料で家の定期点検をし、そしてもし建てた工務店が無くなってしまっても、仲間の工務店が引き継いでその家を守っていく仕組みを、地域のほかの工務店とともに作りました。
また、資金がなければ家のリフォームをしたくてもできないということで、毎月無理のない金額を積み立ててもらい、そのかわりに設備の延長保証代を工務店側が負担するというサービスも考案。
家を建てた人にとっては、良い状態を長く保ち、売るときには少しでも高く売れる家を。
工務店にとっては、新築住宅を建てて終わりではなく、家のメンテナンスやリフォームのようなリピーターが生まれるビジネスモデルを作るという、どちらにとってもWin-Winの仕組みを生み出したのです。
今後の展開‐久留米のまちを作る‐
ホームラボの目指す家づくりは、現在「愛されつづける家でまちと家族を豊かにする」という言葉で表現されています。
この言葉を現実のものとするために、2024年、新たなチャレンジが始まります。
それが「久留米の家」プロジェクト。
ホームラボがある久留米は戦時中空襲にあい、古い昔ながらの家がほかの地域よりも少ないといいます。
戦後新しく作られた町並みに、築20年ほどでなくなってしまう家を作って壊して……を繰り返していても、町としての歴史が積み重なっていかないと徳冨さんは感じていらっしゃいます。
そこで100年間続く家、残したくなるような家を作ることを目指しているのが「久留米の家」プロジェクトです。
メンテナンスで長く住めるというだけでなく、ずっとまちに残したくなるような家とは「美しい家」でなければならないといいます。
そこで1歩1歩の前進ではなく、ポーンと突き抜けたような進化を見せるべく、建築家の伊礼智先生に設計を依頼し、新しいモデルハウスを作っている最中です。
単に家を作ることを越えて、「まちを豊かにする」という挑戦。
一体どんな家ができるのか……ホームラボの新たなフェーズに注目が集まります。
魅力的な会社とは?
会社を経営していくうえで、社員や組織への思いをお伺いしてみたところ、
「集客と求人は根本は同じ」と徳冨社長は言います。
お客様にとっても働く人にとっても、魅力的な会社かということが大切で、それを表から見るか、裏から見るかの違いだと考えているということ。
そのために、経営者の仕事として、給与を大企業並かそれ以上に上げていくことを目指したり、まとまった休みをとれるようにする仕組みづくりなどに取り組んでいらっしゃるとのこと。
それに加え、「久留米の家」のような新しい取り組みを行い、仕事自体の面白さもさらにアップさせ、社員にとってここで働いていることが誇りになるような会社を作っていく。
それがお客さんにも跳ね返り、「いい会社で家を作れて嬉しい」と思われるような会社になることが、一番のアフターフォローにもなると考えていると話してくださいました。
最後に若い世代に向けたメッセージをお伺いしました。
「ベタになるかもしれないけど、やりたいことと、やりたくないんだけどこっちのほうが条件がいいこと、どっちをとるか迷ったときは、自分がやりたいと思うほうを選んだほうが後悔が少ないと思うんですよ。何か夢中になって取り組めることがあったらそれをやるほうがいいと思います。
生活のことが、とかあるかもしれないけど、そこでぐっと踏みとどまってやってみると、思った以上に楽しくて、そこでの経験が何かにつながっていくことって結構あると思いますね。
そして、逃げられないようなことが目の前に現れたら、嫌かもしれないけど、それはもう運命として精一杯取り組んでやったほうがいいってことなのかもしれないなと思います」